本研究の目的は、企業の社会的責任の中でもサスティナビリティ理解(持続可能性)の確立に焦点を当て、その本質的な生成メカニズムを明らかにすることにある。そのために、サスサスティナビリティ・マーケティングがエコ・マーケティング理解を基盤に議論されてきたことを指摘し、両者が同様の限界を内包していることを明らかにし、代表的な事例の歴史的な分析を行なった。 サステイナビリティ・マーケティング理解では、企業が事業の中で社会課題の解決に取り組み、社会・環境に持続的に貢献する事業活動を行うことが目指されているが、そこでは社会全体を把握できることが前提となっている。しかし、これまでの研究において、サステイナビリティ・マーケティングにおいて、問題もそのニーズも前提ではなく、それらは創造されるべき対象であることを指摘した。 そこで、社会課題もそのニーズも前提にしない視点、言い換えれば社会全体を把握することはできないことを前提とする視点に立ちながら、それにも関わらず認識される社会全体についての考察とそれを起点としたマーケティングはどのような特性を持つのかを考察した。その視点として考察したのがルーマンに従う社会構成主義アプローチであった。 ルーマンの社会構成主義アプローチをマーケティングに応用する際に注目したい特徴は3つに整理された。第1に、システムと環境の「区別=差異」への視点である。第2に、社会課題は部分システムのコミュニケーションの連鎖、差異の成立・再産出の中で生成されるという点である。第3に、部分システムにおける社会課題やニーズの理解がどのようにありえているのか、これを別の部分システム(環境世界)から観察することが手がかりになると考えられる。このような視点による考察がサステイナビリティ・マーケティングを進める上で、対象とすべき問題とニーズを捉える視点として有効であることを指摘した。
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