平成28年度までに整理したパラメターでモデルを修正した。数値解析の結果、(1)卸売業者の活動規模が拡大すると小型店の店舗数が増加すること、(2)小型店の店舗規模が小さくなると小型店の店舗数が増加すること、(3)大型店の活動規模が拡大すると小型店の店舗数が増加すること等が主にわかり、これらは杉本(2018)に含めた。さらに、卸売マージンを外的パラメターとしたモデルで卸売業者(群)の活動が小売市場群へ及ぼす影響を分析したところ、(4)卸売マージンが低いほど小型店店舗密度は高くなることが明示解を得てわかり、この結果は日本マーケティングサイエンス学会第102回大会で報告した。 これらモデルの妥当性はデータで確認した。2003-2007年のヨーロッパおよび南米の国家レベル、2002-2007年の日本国内の都道府県レベル、1985-2012年の日本国内の市区町村レベルおよび市区レベルでモデルをおおよそ支持する結果が得られた。2002年と2007年の西日本地域のメッシュデータ分析は、(1)(2)が支持されうる結果だった。 メッシュデータ分析では、事例調査してきた地方卸売市場が含まれるA地域を診断事例とした。本モデルに即して分析した結果、A地域は卸売活動でなく、大型店の活動で周辺小売店の店舗数が左右されていると示唆される。A地域は、本研究のモデルに即した診断結果として公表することが適切と最終的に判断した。 結論的に、小型店従業者規模が小さく、人口あたり大型店従業者数が多く、人口あたり卸売従業者数が多いとき、小型店店舗密度は高くなることがわかり、特定の国や経済で小売店(小型店)の店舗密度が高くなるのは、小規模な小売を卸が支える構造を持っているときだと示唆された。
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