近年、探索と深化という2つのタイプの組織学習を同時に実践する、「両利きの経営」の重要性が指摘されており、予算管理やバランスト・スコアカードといったマネジメント・コントロール・システム(以下「MCS」と略)との関連も一部明らかになっている。本研究の目的は、この探索と深化をバランスさせるMCSを実証的に分析することである。 28年度は最終年度であり、この研究目的を達成するため、以下のようなプロセスで研究を行った。まず、理論ベースとして、当初考えていたコンティンジェンシー理論だけではなく、コンフィギュレーショナル・アプローチの重要性も明らかになったため、この理論に基づく先行研究の文献の調査を実施した。つぎに、コンフィギュレーショナル・アプローチに基づき、サーベイ研究という研究方法を用いて、MCSと探索・深化という組織学習との関連を分析した。具体的には、予算管理というMCSを対象とし、それらの特徴がどのように結びついているのかという観点で、日本企業における予算管理の基本的類型を3つ明らかにしたうえで、その類型と探索・深化との関連を実証的に考察した。この研究成果の一部は、学会発表と雑誌論文として報告した。 さらに、予算管理の特徴のうち、日本企業における当初予算の修正の重要性が明らかになったため、その先行要因と効果の分析を行う、先端企業に対するフィールド研究も実施した。この研究成果の一部は、学会発表として報告した。
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