研究実績の概要 |
研究計画の3年目の本年度は,環境アカウンタビリティの組織の内外での整合性について,明らかにする計画を立ててきた。分析の方法としては主として以下の2つのアプローチを採用した。 第一に,組織の既存のマネジメントケーパビリティが環境管理会計手法の採用に与える影響について分析を行っている。従来の管理会計研究では,手法の採用や構成を説明する要因として外部のコンティンジェント要因に注目がなされてきた。しかしながらマネジメント・コントロール・システムをコントロール同士のパッケージとして捉えようとする近年のアプローチは,内部のコントロール間の補完性,代替性が与える影響が重要であることを示唆している。これに対して,本研究課題を通じて,リソース・ベースド・ビューを用いてマネジメント・システムの構成と,環境配慮型の戦略的管理会計の手法の採用との補完性を分析した。 第二に,フルコスト会計と自然資本の連携可能性について理論的に考察を行った。現在,ISO14007, 14008として環境影響の貨幣評価の規格の策定が進められている。後者は経済学アプローチをベースとした,環境負荷,環境側面の経済評価方法の標準化であり,ISO14001へ経済情報を反映させるための計算技術的な規格といえる。これに対して前者の手法は,マネジメントの文脈のなかでISO14008などによって算出される環境影響の貨幣評価情報を,組織内のコスト&ベネフィット分析のなかに反映するための枠組みが検討されている。これらは従来の管理会計の文脈では,フルコスト会計として内部環境コストと外部環境コストの両方を対象としてフルコスト(=社会コスト)を計算する枠組みと近似している。また統合報告のガイドラインの発行以降,会計学領域でも注目を集めている自然資本との連携を視野に入れている。これらの関係について,本研究課題では論点および課題を検討した。
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