本研究は,行政組織において導入が進んでいる業績管理システムのデザインや利用方法が組織の業績にどのような影響を及ぼすかを明らかにしようとするものである。わが国の行政組織では,すでに多くの組織において業績管理システムが導入はされているものの,それを有効に活用できている組織は必ずしも多くはない。事実,評価のための資料作成などに多大なコストを投じているにもかかわらず,モチベーションや効率性の改善につながっておらず,業績評価システムの廃止を検討する組織も少なくない。 これまで,国内外の文献の整理やインタビューなど,定性的な情報を中心に研究を進めてきたが,最終年度では,791の地方自治体を対象とした質問票調査を実施し,定量的な分析のためのデータ収集に重きを置いて調査活動を行った。あわせて,最終年度ということもあり,研究成果を取りまとめ,国内外の学会において報告を行うとともに論文の執筆を行った。論文の公表は,研究実施期間内にすべてを終えることはできなかったが,①行政組織における業績管理システムの導入により生ずるリスクと,当該リスクが生ずる要因,②業績管理システムリスクの軽減策,③不適切な業績指標が設定された場合に,それを修正するための部門間相互評価の効果,④業績指標の固定化が組織のマネジメントに与える影響,⑤行政組織における業績管理システム活用のための管理会計能力,といった本研究の具体的な研究成果について早期に論文として公表する予定である。
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