管理会計研究において、原価企画と設備投資管理の関係を解明した研究は少ない。本研究は製品原価に関して持続的な競争優位性を保持するには、いかにして原価企画等の原価管理体系と設備投資管理を効果的に結び付けるべきかを解明すべく、研究を実施した。本研究を遂行した結果、平成28年度は3本の論稿を執筆した。 まず「トヨタ自動車における原価管理体系と設備投資」(『明治大学社会科学研究所紀要』第55巻第2号、2017年3月)で、トヨタ自動車の事例を通じて、①提携会社に生産委託を行うようになったことから、設備投資の管理が原価低減という点から原価管理体系に包含されるようになったこと。さらに②製造現場の原価低減活動を担う部門と、設備投資を担う部門の連携が進展したため、原価低減のさらなる推進のために設備投資の一体的考慮が必要になったことを指摘した。また「中国における小売業の荒利益計算-総合値入率法の事例を通じて-」(『産業経理』第76巻第3号、2016年10月)および「管理会計におけるMMループの意義と課題」(『管理会計学』第25巻第2号、2017年3月)を通じて、MMループというフレームワークを通じて考察すれば、データの出所、集計期間、主たる提供者の範囲等が異なる複数のループであったとしても、それらが上手く整合的にシステム全体として繋がっているか否か、さらにその形成過程も観察することができることを指摘した。 3か年の研究を通じて、原価企画をはじめとする原価管理体系と設備投資管理が関わるようになった背景および、そのあるべき姿の輪郭を本研究では指摘できたと考える。
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