研究実績の概要 |
本年度(平成26年度)は、(1)金融危機状況における会計情報の質的特性を分析するとともに、(2)会計情報を含むマルチファクターモデルを構築した。 (1)金融危機状況における会計情報の質的特性に関する分析では、本研究に着手する準備として前年度までに、東京証券取引所第1部上場企業を対象として、Gu. Zhang, “Across-sample Incomparability of R2s and Additional Evidence on Value Relevance Changes Over Time,” Journal of Business Finance & Accounting, Vol.34 No.7-8, 2007, pp.1073-1098 に依拠した実証分析を行っていた。本年度は、標本対象をアジア6か国に拡張し、金融危機時に日本において確認された会計情報に対する資本市場の反応と同様の現象がそれらの国においても確認されるか検証をおこなった。Gu(2007)が提唱する異常価値評価誤差に基づく検証結果は次のとおりである。日本において観察された、金融危機後における異常価値評価誤差の上昇は標本対象としたほとんどの国において観察された。ただし、その後のトレンドは一様ではない。 (2)会計情報を含むマルチファクターモデルの構築は前年度までに行ってきた共同研究の成果であり、当初予定した計画以上の進捗度で進んでいる。当該研究成果は、日本経営分析学会が刊行する年報『経営分析研究』第31号(2015年3月)に「会計項目を含む時変係数ファクターモデルの提案」として掲載された。本論文では、時間経過に応じた会計情報に対する株式収益率の感応度の変化を捉える時変係数ファクターモデルを構築し、分析をおこなった。
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