本研究は,日本企業における予算スラックの管理実態を明らかにし,予算スラックに対する異なるコントロール手法やそれらが与える影響,およびその要因を解明することを目的としている。また,当初の研究計画において平成28年度は,平成26年度より実施しているインタビュー調査を継続的に実施するのみならず,平成27年度に実施した質問票調査によるデータをSPSS等の統計パッケージソフトを用いて解析を行う予定であった。さらに,そうした実証的研究の成果を国内の学会において報告し,学会誌へ投稿することを予定していた。 以上のような研究の目的および計画に対し,本年度に実施した研究の成果として,質問票調査によるデータを用いて行った統計解析の結果を国内の学会において発表した。 当該発表においては,東京証券取引所(東証一部,東証二部,JASDAQ,およびマザーズ)に上場する企業を対象として行った質問票調査のデータを用いて,(1)欧米において研究されている予算スラックの形成要因と予算スラックとの間の関係が日本企業を対象として一般化できるかどうか,(2)上位者によるコントロールと予算スラックの形成との関係,という2点について明らかにすることを目的として実施した実証研究について発表した。統計解析の結果,(1)日本企業に対して単純に欧米の研究を適用することは不適切であり,日本独自の視点を持って研究することが望ましいこと,そして(2)予算スラック研究において,下位者の予算スラック形成行動にのみ焦点を当てるのではなく,今後は上位者によるコントロールの影響も考慮して検討する必要があること,が示唆された。 本研究は,これまであまり明らかにされてきていなかった日本企業における予算スラックの管理実態および予算スラックに対するコントロールに関して言及したものであり,研究のみならず実務に対しても重要な意義を持った研究である。
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