本年度の成果は、資源動員に直接関するものと、資源動員の前提条件に関するものと二分できる。 前者については、Robert Simonsの理論に着目した研究、マテリアルフローコスト会計を事例にした研究を行った。Simonsに着目した研究では、戦略面の不確実性のコンテクスト依存的な性質を踏まえた上で戦略面の不確実性と管理会計情報の関係性を捉える研究や、影響の幅を広げるという観点から、イノベーション促進の局面での管理会計情報の構築的役割を捉えた経験的研究などがイノベーションを促進する管理会計の役割の理解を進めるために必要であることを明らかにした。マテリアルフローコスト会計を事例にした研究では、マテリアルフローコスト会計がイノベーションを促進するための方策として、エンジニアがマテリアルフローコスト会計のデータを活用した新技術の提案を行うことができるような組織体制・システムを構築すること、過品質をキーワードにし、サプライヤーとコミュニケーションを行うこと、サプライヤーから信頼を得る手段として「共有されている期待」を表すロードマップを作成し、それにトップマネジメントが正当性を付与すること、資源生産性に関する目標を設定し、それを業績評価指標に組み込むこと等を提示した。 後者については、マテリアルフローコスト会計の実践への普及に着目した研究、マテリアルフローコスト会計の継続的利用に着目した研究を、主にEverett M. Rogersの理論を利用して遂行し、様々な形態でマテリアルフローコスト会計が位置付けられることは、普及において重要であり、その適合性を高めることが重要であることや、継続的利用の際の問題として、試行導入後の展開可能性の評価に関する困難性に対処することが重要であること等を明らかにした。
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