昨年に引き続き、トランスジェンダーの活動家、6名にインタビューを行った。そのうち2人以外は、長期間の間隔をあけた、2回目のインタビューであった。当初、市井の当事者へのインタビューを予定していたが、活動家に焦点を当て、話を聞いていくのがよいということで、インタビューの相手を活動家に絞った。 活動家に注目するようになったのは、以下の理由による。消極的な理由としては、市井の当事者にインタビューをするために、アクセスするのが困難であること、またコミュニティの中の多様性が増大し、アクセスできても代表性をどのように考えるべきかわからないからということである。積極的な理由としては、かつてインタビューを行った人びとが、現在コミュニティを牽引する活動家になっており、つながりがもて、貴重な立場からの話が聞けるということである。 その結果を持って、「水と油を乳化する」というトランスジェンダーと性同一性障害を差異化する実践を記述する論文を執筆した。これは、トランスジェンダーと性同一性章害という概念の概念分析という側面から書いたものである。 トランスジェンダーは、ジェンダーの境界にゆらぎをもたらすことに結びついているのに対して、性同一性障害はジェンダーの境界を維持することに結びついていることなどを知見とした。 今度、収集したインタビューデータを用いて、二つの概念がどのように結びついているのか、あるいは相反しているのかなどについて、論考を書いていく見込みが見えてくると同時に、活動家に焦点を当てたインタビューを継続するべきという手応えを得た。
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