研究課題/領域番号 |
26780272
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
朴 沙羅 京都大学, 人文科学研究所, 研究員 (40726973)
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研究期間 (年度) |
2015-03-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生活史 / 国際移住 / 非正規滞在 / レイシズム |
研究実績の概要 |
今年度は7月に沖縄県公文書館・沖縄県立図書館での文書収集を行った。また沖縄県石垣市与那国町・沖縄県糸満市において、1940年代後半に「密貿易」を行った、あるいは目撃した人々7名からインタビューを収集した。さらに7月から10月にかけて、大阪府内において在日コリアン1世を対象としたデイサービスセンターにて、5名の生活史インタビューを収集した。また海外調査としては、2月に台湾(台北市)の国家トウ案館および台湾政治大学にて、日本人の引揚げと「密貿易」に関する新聞資料・公文書を収集した。 これらの調査結果は、占領期日本周辺での「密航」「密貿易」を可能にしたネットワークを分析したものとして、学術ジャーナル『理論と動態』に投稿され、現在査読結果を待っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度より準備してきた実績がそろいつつあるため。昨年度の調査結果を国際的な非正規移民管理制度の構築と関連づけた論文を、学術ジャーナル『Race and Class』に投稿し、2015年10月に掲載予定との報告を受けている。また口頭報告としては、8月にAmerican Sociological Association Annual Meetingにて口頭報告(査読あり)を行った。また12月にはEast Asian Junior Sociologists Forumにて口頭報告を行った。その他、出版としては、2016年2月に水声社より翻訳書『オーラルヒストリーとは何か』(原題:The Death of Luigi Trastulli, Alessandro Portelli著、SUNY Press, 1991年)を刊行した。さらに、本書の出版に関連して、来年度あるいは再来年度に、原著者であるAlessandro Portelli氏(ローマ大学ラ・サピエンツァ校名誉教授)を招聘し、国際シンポジウムを開催すべく現在鋭意企画中である。 そのほか、編著『最強の社会調査』は、2015年5月半ばに出版の運びとなり、現在校正中である。また、2014年11月にソウル・聖公会大学で行った「密航」に関する口頭報告は、加筆修正した論文を聖公会大学に提出し、来年度中に韓国語での出版が決定され、現在校正が行われている。博士論文は2016年10月に刊行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は引き続き京都・大阪での調査を行うとともに、国際的な難民受け入れ態勢の発生・発展と展開という歴史的・比較社会学的観点から資料収集を進める。具体的には春季(4~6月)に参与観察を行いつつ入国管理・国籍法の運用実態に関する調査を行うとともに、夏期(7~9月)にはドイツ・オーストリアにて難民受け入れの行政サービスに関するインタビュー調査を行う。秋期(10~12月)にはヨーロッパにおける第2次世界大戦後の難民受け入れ態勢の発生に関する文書調査および先行研究の精査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
夏季休暇期間中にヨーロッパにて調査を行う予定だったが、現地での調査予定地が同じ時期にシリア等からの難民受け入れのため多忙を極め、調査やインタビューを受け入れる余裕がなくなり、長期間での調査が不可能になってしまったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は同じ調査先に再度問い合わせを行い、夏季休暇期間中に調査を遂行する。
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