本研究は、1960年代末から70年代前半の沖縄において、沖縄住民と黒人反戦兵士、そして米国の反戦運動活動家(特にサンフランシスコに本部を置いたPacific Counseling Serviceから沖縄・日本に派遣された活動家)との関係性、そしてこれらの人びとによる運動に対する在沖米軍の対応のありようを明らかにすることを目的としている。 2015年度は、前年度にひきつづき、資料の収集と読み込みを進めた。まず、2015年3月にカリフォルニア大学バークレー校バンクロフト図書館で収集したPacific Counseling Service(PCS)に関する一次史料の分析を進めた。この調査では所蔵されているPCS関連文書のすべてを確認・撮影することはできなかったため、2016年3月に2回目の現地調査を実施し、PCS関連文書の7割程度の撮影を終えることができた。その結果、PCS関連文書の概要と沖縄に関する資料の全体像を把握することができ、その成果の一部を発表した。具体的には口頭報告「沖縄ヤングベ平連・PCS・黒人兵」(地域ベ平連研究会、立教大学、2015年12月5日)や論文「〈新〉植民地主義論という光のもとで「沖縄問題」を考えるーー創り出される現場から」(『立命館言語文化研究』27巻1号)などである。 また、成果をふまえ、資料調査の範囲を広げるとともに、聞き取り調査にも取り組んだ。サンフランシスコ市立中央図書館、サザンカリフォルニアライブラリー、サンフランシスコ州立大学エスニックスタディーズ学部などでの資料収集を行ない、(1)黒人兵士によるアジア連帯運動、(2)アジア系アメリカ人、特に日系アメリカ人によるベトナム反戦運動や沖縄闘争に関する運動の資料を収集した。また、当事者への聞き取り調査を始めた。この結果、沖縄へ流れ込んだアメリカ国内の運動ーー黒人兵、ベトナム反戦運動、アジア系アメリカ人の解放運動等ーーの多層性が明らかとなった。現在、分析をさらに進め、論文にまとめている。
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