研究期間の最終年度は、研究開始時に計画した調査対象地域における取り組みの他、過年度に探索的に把握した、有益な先進事例・進行中の事例への参与を深めつつ、研究期間の総括的成果のとりまとめを行った。また、本研究で設定した課題をより掘り下げるための要因の焦点化につながる視点・論点の抽出につとめた。 中心的事例に設定した群馬県みなかみ町においては、1年を通じて継続的に現地調査を行い、現地関係者と連携した調査と取り組みの支援を実施した。とくに本研究の過程で詳細な把握を行った東京おもちゃ美術館の「ウッドスタート事業」について現地関係者に情報提供を行い、平成28年7月にみなかみ町が「ウッドスタート宣言」をするに至り、当地の森林生態系サービスの付加価値創出の取り組みが進展した。こうした研究と実装の成果は、平成29年度に刊行予定の雑誌に論文「国有林における「資源化のダイナミズム」の喪失と再生」を投稿した。また、この論文の内容を発展させた単著書の構想と執筆に取り組んだ。 あわせて、地域資源の「資源化のダイナミズム」の特質を捉えるために参照すべき事例として、(1)長野県内各地の自然エネルギー導入状況の把握と地域に根ざした普及の取り組み、(2)長野県安曇野市における里山保全・再生に向けた住民参加による地域産材活用の取り組み、(3)東京おもちゃ美術館による「ウッドスタート」事業の取り組み、(4)長野県伊那市と宮田村において林産物・農産物等を介した遠隔地域間連携の取り組み、の現地調査や情報収集を進めた。 本研究を支える環境社会学の理論枠組みの検討と深化の一環として、第89回日本社会学会大会にて「環境ガバナンス時代における環境制御システム論の理論射程」と題した発表を行った。この成果は、平成29年度に刊行予定の共著書に反映される予定である。
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