研究実績の概要 |
研究計画最終年度にあたる2018年度は,主として以下の作業をおこなった. 1. 今日の日本社会において,交際・結婚・出産育児は禁じられないという意味で「平等に自由」である.だが実際にそれを望めば選択できるか否か(実質的自由)には,社会的資源に応じた不平等がある.そこで本研究では,2015年インターネット調査データを用いて,交際・結婚・出産育児を選好する男性サンプルを分析し,以下を明らかにした.20代から60代まで,個人収入が多い階層ほど交際・結婚・出産育児を実現できる.またこの交際・結婚・出産育児の経験の有無は,若い世代ほど個人収入と強く関連している.それゆえ,低収入層に十分な収入と将来への安心を与えることが,交際・結婚・出産育児の実現を促進するのに有効だと考えることができる.(書籍の論文として発表) 2. 差別をいかに概念化し分析するかについては,長く社会科学・哲学上の問いとなっている.本研究では,主に国内の社会学における重要な理論的展開と,それによって社会学的な差別研究が幅広い現象を射程に収めることが可能になったことを跡づけた.また差別か否かをめぐる争いも含め,差別関連現象を総合的に扱うことが社会学では有効だと主張した.そのうえで,社会学的な「相互行為の理論モデル」を基に,さまざまな差別の要因を体系的に整理する有効な分析枠組みを提示した.(シンポジウムにおける講演後,学術雑誌の特集論文として掲載決定) 3. 2017年度に実査をおこなった自治体調査のデータ入力および納品をうけて,データクリーニング作業をおこなった(N=1608, 53.6%).この調査データは,本研究計画の中心的テーマであるサポートネットワークのネームジェネレターや,さまざまな規範,選好,信念などを含むものであるため,本格的な分析の準備作業となる基礎的な集計作業をおこなった.(紀要論文として刊行)
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