本研究は、旧産炭地における貧困・生活不安定層の地域移動に見られる定着・流出・還流と、労働=生活過程を歴史的位相を加味して分析し、貧困・生活不安定問題の地域的形成とその現代的展開を明らかにするものである。戦後の炭鉱産業の変動が、旧産炭地の地域社会にもたらした影響は多大であった。筑豊地域においてもその影響は、とりわけ貧困問題、失業問題、生活保護問題として現在に至るまで継続している。それゆえ国策としてドラスティックに行われた炭鉱合理化・閉山の地域社会への影響を継続的に調査する必要がある。また、貧困・社会的排除問題がますます深刻化する中で、貧困・生活不安定層の地域的形成に関する研究をより深化させることが急務である。その際、人の移動/非移動と貧困との関係に着目し、貧困・生活不安定層が地域に定着・滞留する構造を捉えようとするところに、本研究のねらいがある。
2014年度は、既存の貧困・社会的排除研究・旧産炭地研究・炭鉱離職者研究について整理を行うとともに、各種公式統計による閉山後から現在までの動向を捉え、行政・教育領域の関係者へのヒアリング、資料収集を行った。また、他地域も含め課題を抱えた地域のフィールドワークも行った。これらにより、本研究の問題意識に関わる論考の準備を進めている。
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