• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実施状況報告書

労働統合型社会的企業の組織形態の成立および社会的包摂効果に関する実証的研究

研究課題

研究課題/領域番号 26780288
研究機関明治学院大学

研究代表者

米澤 旦  明治学院大学, 社会学部, 准教授 (60711926)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード労働統合型社会的企業 / サードセクター / 非営利組織 / 社会政策 / 就労支援 / 中間的就労 / 新制度派組織論
研究実績の概要

本研究では、労働統合型社会的企業(Work integration social enterprise)の組織形態の成立とその社会的包摂の効果についての基礎的理論研究および経験的研究を実施した。特に国内の労働統合型社会的企業が、連帯型と支援型の二つの形態に区分できることに注目し、それぞれ差異や社会的包摂効果を検討する点に研究上の特性がある。本年度の成果は二つにまとめられる。
(1)基礎理論的研究
サードセクターおよび社会的企業の基礎理論の整理を行った。具体的には、サードセクター・社会的企業研究における既存の理論枠組の問題点を整理し、新たな段階に進む必要があるという知見を得た。海外のサードセクター研究や新制度派社会学を利用して、「制度ロジック」という概念を用いることにより、既存のサードセクター論の問題を解消することが可能であると主張する論文をまとめ、学会にて報告した。
(2)経験的研究
労働統合型社会的企業の成立と帰結に関して一定の知見を得ることができた。社会的企業の成立に関しては、2000年代以降について社会的企業の成立を、組織フィールドの成立と捉え直し、政策文書データや各組織の事例分析により、組織間の相互作用の増加や組織形態の正統化が確認できることを示した。さらに、組織形態が連帯型と支援型に区分できることを、法制度および組織関係者のヒアリングデータ(二次分析)から整理し、両者の区分を整理した。さらに、連帯型と支援型の社会的企業に関して、それぞれの社会的包摂効果を主としてヒアリングデータ(二次分析)や組織内部文書などを利用しながら分析した。この成果の一部は学位論文としてまとめた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

基礎理論的研究、経験的研究(組織形態の成立および社会包摂効果)に関して、前年度までの資料収集や先行研究の検討、および新しいデータ収集結果に基づき、一定の知見を得ることができた。とりわけ理論的な検討を福祉社会学会という専門学会のシンポジウムにて報告し、リプライを得たことは研究の進展には大きな意味があった。このように部分的にとはいえ、学会や論文として公開することもできた。
ただし、とりわけ経験的研究に関して言えば、そのすべてを報告・公開できたわけではなかった。そのため、第三年度においては、助成研究事業の成果発表に注力し、これまでの研究を基盤としたさらなる研究の蓄積に注力する必要がある。

今後の研究の推進方策

今後の研究の方向性は、組織形態の成立、社会的包摂効果、マクロな社会変動(福祉国家の変容)との関連付けという、三点に集約される。
(1)組織形態に関しては成立について、これまでは政策、組織レベルが中心であったため、より社会一般の受容に注目する必要があると考えられる。このためには、新聞記事などを利用した内容分析を行うことでより精緻化する必要がある。とりわけ、社会一般がどのように社会的企業を受容をし、社会的企業という組織形態に何を期待してきたのかを説明することが求められる。
(2)社会的包摂効果については単独事例の研究を主に進めてきたため、複数事例における社会的包摂効果を検討する必要がある。複数事例の検討を行うことで、法人格や組織規模、業種などの様々な組織変数と社会的包摂効果の関係が理解できると考えられる。
(3)成立と社会的包摂効果のいずれにおいても、福祉国家の変化というマクロ的な社会変化と労働統合型社会的企業の成立の関係、またその帰結が持つ意味を検討する必要がある。とりわけ、これまでの本研究の遂行から得られた知見により、福祉国家のサービス化(社会支出のサービス給付割合の増加)と労働統合型社会的企業およびサードセクターの重要性の高まりは、強く関連しているとの推論が可能になった。この推論を検証するためにも、国際比較研究などを通じて、福祉国家の変化と労働統合型社会的企業の関係を説明する必要があると考えられる。
さらに、第二年度は成果発表が限定的であったため、前年度までの成果の発表を急ぐ必要がある。

次年度使用額が生じた理由

一部予算を執行できなかった理由は、スケジュール上の問題のため、想定していた国際学会での研究報告を実施するための海外渡航をすることができなかったこと、および想定していたヒアリングの代わりに既存の団体による内部資料の分析およびヒアリングの二次データを利用できたことによる。ただし、後者については、内部資料分析にかかわる方法論のテキストの購入などによって研究のさらなる発展を試みることができた。しかし、今後の研究計画と関連して、とりわけ、海外における学会報告や資料収集に取り組めなかったことが、問題として残されてしまった。

次年度使用額の使用計画

第三年度の課題である、研究成果の公開促進のための国内・国際学会等による報告や、よりマクロな社会変化との関連の検討のための、資料収集を行う予定である。資料収集に関して想定している国はイギリスであり、サービス化の進展とサードセクター研究との結びつきについて、資料収集可能な制度(資料センターなど)があれば利用することを考えている。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] サードセクター研究の第三ステージ2016

    • 著者名/発表者名
      米澤旦
    • 雑誌名

      福祉社会学研究

      巻: 13 ページ: 28-41

    • 謝辞記載あり
  • [学会発表] サードセクター研究の第三ステージ2015

    • 著者名/発表者名
      米澤旦
    • 学会等名
      福祉社会学会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県名古屋市)
    • 年月日
      2015-06-14
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi