最終年度(三年目)は、少年犯罪に関するテレビ報道の分析に従事した。特に報道の構成内容、ショットや演出・テロップ等についての質的分析が中心である。分析結果は今年度においては未公表であったが、三年間の研究成果を合わせるかたちで、研究代表者が編者として関わる教育社会学テキストの内容として収録される予定である(現在印刷中)。 研究目的のなかに複数のメディアを対象とした「クロスメディア分析」を挙げていたが、今年度までの研究によって新聞(全国紙・地方紙)、雑誌、テレビといったそれぞれのメディアについて分析を積み重ねることができた。1997年の神戸・連続児童殺傷事件を事例にすると、全国紙・地方紙・雑誌における「ニュース・フレーム」はかなりの程度相関していることがわかった。具体的には、同年6月末から7月中旬までの「学校問題」というフレームから「心の闇」というフレームへの移行がほぼ軌を一にしていた。テレビについても、近年の事件を事例にすると、かなりの程度相関している。ただし、各メディアにおいて許容される表現の範囲があり、新聞の場合は穏当な範囲に収まり、雑誌とテレビの場合は穏当なものからより煽情的なものまで幅が広くとられていた。雑誌の場合はこれに学術的な評論というパターンが加わる。 どのメディアがフレーム形成を先行させたかという点については解釈が難しいが、テレビと新聞が雑誌に優越していると考えられる。また、新聞という同一メディア内においても、全国からのニュースが紙面を奪い合う全国紙に対し、地元の事件に多く紙面を割く地方紙では、地元で起きた事件についてよりさまざまな観点からの報道を行うことができる傾向が観察された。
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