本研究では、日本とインドネシアで生活する台湾人元日本兵の台湾アイデンティティがいかに形成・変容したのかを比較検証した。台湾研究では、台湾アイデンティティの原点は228事件にあるとされているが、台湾の外で暮らす台湾人にとっては台湾の民主化による影響が大きく、台湾の内外ではアイデンティティの形成にタイムラグが生じていると考えられることがわかった。日系人と華僑華人のはざまにおかれてきたが故にこれまで研究上の盲点となっていた台湾系華僑華人を通じて「戦後」の東アジア・東南アジア社会を新たに描き直す端緒とできた点に本研究の意義がある。
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