本研究課題では、滋賀県、福島県の2つの地域において、私有地である農地管理の問題に、コミュニティがどのような論理で関与することができるのか、という問題関心から調査を実施した。滋賀県の調査は、4年間の研究期間のうち、とくに前半の2年間で、福島県の調査は、とくに後半の2年間で実施する計画であった。 滋賀県野洲市での調査の結果、当該農村集落では、ある農家が耕作できなくなった水田を、地域の他の農家が請け負うということが広く行われており、そのような行為の背景には「地域の農地は地域で守る」という考え方と、その考え方を実現する仕組みとして「農業組合による耕作請負システム」があることがわかった。 一方、福島県の事例地は、原発事故の被害のあった地域である。調査対象の地域が昨年6月まで原発事故の避難指示区域となっていたため、なかなか計画通りに調査をすすめることができなかった。平成28年度は、避難指示が解除されたことにより、今後の農地管理や帰村後の地域コミュニティの課題などについて少しずつ動きがでてきて、話を聞くこともできるようになってきた。まだ、十分に聞き取り調査ができているとは言えないが、原発事故から6年の年月が経っており、避難が長期化したことによる課題も少なくないように思われる。
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