本研究は、社会調査データの分析から、原発・失業・犯罪という3つのリスクに対する不安の社会的形成要因とその社会的帰結を実証的に明らかにし、この結果をもとに安心社会のモデルを構想することである。 前年までに、原発リスク不安、失業リスク不安、犯罪リスク不安の分析はすでに行っており、今年度は、これら分析結果から、現代日本におけるリスク社会像、安心社会を考察する作業を進めた。具体的には、社会階層、ジェンダー、世代、制度など社会的要因の各リスク不安への影響や、リスク不安の社会的帰結について比較検討することで、各リスクの特徴を描出するとともに、リスク社会論の批判的検討を行い、リスク不安を低減する政策について考察を行った。 これらの作業のなかで、各リスクの比較分析が必要となったため、インターネット調査を実施した。これまでの分析は主に2次分析であったため、リスクの指標については既存の質問を利用せざるをえず、各リスク不安同士の関連性も分析できなかった。そこで、新たに調査を実施し、原発・失業・犯罪の各リスク不安の関連性、社会的要因との関連性、社会的帰結との関連性を実証的に明らかにした。 また、リスク不安の分析結果を解釈するために、失業リスクの趨勢分析や原発被害リスク、犯罪被害リスクについて、すでに行った結果についてまとめ、その結果をもとに、リスク不安の社会的形成要因について考察した。犯罪被害リスクについては分析が不十分であったので、官公庁データから職業とリスク被害の関連性について分析・考察を行った。 これらの成果は1つの著書(共著)、1つの学会報告としてまとめた。
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