研究課題/領域番号 |
26780298
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研究機関 | 国立社会保障・人口問題研究所 |
研究代表者 |
別府 志海 国立社会保障・人口問題研究所, 情報調査分析部, 第二室長 (10649510)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 健康寿命 / 高齢化 / 疾病構造 |
研究実績の概要 |
日本の平均寿命の伸長は、1980年代以降になると主に高年齢での死亡率低下の影響が大きくなっている。死亡率の低下と死亡の前段階としての健康・不健康状態との関連については、死亡率の低下に伴い不健康状態は短縮するとも伸長するとも言われており、国際的にみても研究途上である。 本研究は、特に高齢化と長寿化が進んでいるわが国について、特に疾病構造の視点から健康状態を分類し健康寿命を算出することにより「生存の質」を定量的に示すことを試みるものである。この健康生命表を用い、特に高年齢における疾病別の平均受療期間を算出し、死亡率改善と健康構造の変化について分析する。健康生命表の作成方法には幾通りか存在するが、調査から得られる健康・不健康別の人口割合を用いて生命表人口を按分し健康寿命を推定するSullivan法(Sullivan 1971)を用いた。なお、このSullivan法は比較的にデータを得やすいため、健康生命表の作成方法として、国際的にも頻繁に用いられている手法である。 分析の結果、平均余命が伸びている中で65歳以下の平均受療期間は短縮傾向にあり、人口全体の健康度が改善していることが示された。他方で男女とも80歳以上では、平均余命に占める平均受療期間の割合が上昇傾向にあった。これは特に通院期間割合が上昇していることに起因している。平均受療期間に占める傷病分類別の割合をみると、男女、入院・通院とも循環器系の疾患が2割以上を占めており、この割合は高年齢ほど高かった。循環器系の疾患は、入院では脳血管疾患、通院では高血圧性心疾患が中心であった。また、特に高年齢について65歳時をみると、循環器系の疾患に次ぐ傷病は、入院は男性が新生物、女性が精神及び行動の障害であり、通院は筋骨格系及び結合組織の疾患であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本の疾病構造を把握するため、厚生労働省『患者調査』を分析データに用いた。当該統計については二次利用申請した上で再集計を行い、疾病構造を反映した健康生命表を作成し分析を行った。「健康日本21」で採用されている健康寿命も含めて従来の健康寿命は、その多くが厚生労働省『国民生活基礎調査』に基づく日常生活動作や主観的健康度を用いたものであるため、本研究により疾病構造を考慮した指標が得られたことは一定の成果である。 上記、健康生命表の作成・分析は当初の計画どおりであることから、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、平成27年度以降は疾病構造と死因構造のデータを対応させて疾病別死亡率の推定を行うとともに、特に高年齢における加齢効果を考慮した疾病別健康度の変化について分析を行う予定である。特に加齢の影響については、マクロレベルから扱った研究例がほとんど無いことから、本研究だけでなく関連した研究に対しても重要な分析となる。 高年齢における加齢の影響に関する分析には、厚生労働省「中高年者縦断調査」などを用いる予定である。そして、疾病構造の変化、疾病別の主観的健康度、加齢による健康度の変化がどの様な関係にあるか、高齢化の進展に伴いこれらはどの様に変化していくのかについて、専門家の意見も聴取しながら明らかにしていく。 これらの研究成果については国内外において積極的に発表していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
統計ソフト(SPSS)を想定よりも割引で購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は少額なので、当初の研究計画どおりに国際学会ならびに国内学会での発表を中心に執行の予定である。
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