本研究「沖縄の暴走族・ヤンキー若者たち、その後――5年にわたる参与観察と生活史調査から」は、沖縄の下層若者を対象とする追跡調査である。 調査を開始した2007年当時、沖縄の暴走族・ヤンキーの若者の多くは、家族関係が不安定で、小学校・中学校に通学した実績がほとんどなく、安定した仕事に就いていなかった。彼・彼女らがその後、どこで、誰とどのようにつながり、どのような経験を重ねたかのか、そして現在、どのような仕事(違法就労を含めて)に就き、どのような世界に住んでいるのかについて追跡調査することが、第一の目的であった。これについては、計画していた聞き取り調査はもちろん、そこから芋づる式に調査対象者を紹介してもらい、想定以上の調査が遂行できた。 続いて、そこで明らかになった沖縄の下層若者の仕事と生活の実態に即して、先行研究で用いられている概念や枠組みの転換・発展を図ることが、第二の目的である。ポール・ウィリスの再生産論「なぜ野郎どもは一見不利に見える親が就いている製造業に就くのか」を、現在の沖縄で展開することが主題である。沖縄の下層労働(建築業・風俗経営業、違法就労業)の再生産が可能となるために、移動も制限され、往々にして暴力を含むつながりのあり方が形成されていることを指摘した。そのようなつながりのあり方を描くことで、彼らが下層労働に主体的に就く過程の再生産論として展開した。 予定していた参与観察、生活史調査は無事にすすみ、その成果の一部は学会報告、論文、書籍として成果を公開した。
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