本研究は、スペシャル・トランスポートサービスについて、国内外を網羅した調査を実施し、高齢者や障がい者に対するアクセシビリティの確保や移動機会の保障のあり方について現状理解を深め、国際比較の観点からわが国における制度設計や制度改革に対する示唆を導出することが目的である。本年度は、前年度に引き続き既往文献の検討やこれまで関連した研究のフィードバックをすすめ、それらの研究成果を論文として整理し、学術誌への投稿を行った。また、現地調査では本研究の対象としている英国のほか、フィンランド、ドイツを含む幅広い国・地域の住民組織、行政、事業者について調査を実施した。具体的な調査箇所は下記の通りである。 英国:Community Transport Association of Scotland、フィンランド:ヘルシンキ地域交通局、フィンランド内務省、Karkkila市交通局、ドイツ:ハインバッハ市役所、コミュニティバス住民代表 続いて、国内ではNPO、社会福祉協議会、行政に対し、同様の調査を実施した。調査箇所は下記の10か所に上る。 北海道:函館市陣川あさひ町会、函館バス、知内町社会福祉協議会、江差町まちづくり推進課、青森県:弘南バス、弘前市都市政策課、鰺ヶ沢町政策推進課、京都府:京丹後市役所企画総務部、NPO法人のっけて、NPO法人おくりむ会野苺 以上の調査を通し、本研究の目的である高齢者や障がい者に対するアクセシビリティの確保や移動機会の保障のあり方に関する現状理解はほぼ達成され、国際比較の観点からハード・ソフト両面にわたる政策的・制度的示唆を導出することができた。また、次年度以降の研究課題として、スペシャル・トランスポートサービスの供給において最も重要な役割を果たす住民組織・NPOと行政の関係、住民組織と利用者のミクロ面での関係等を明らかにすべきであるとの課題を導出することができた。
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