研究課題
今年度は1)意味性認知症患者介護者の介護負担感の検討、2)介護者の介護負担感が患者の症状等に及ぼす影響についての予備的分析、3)介護者の介護負担感軽減に焦点を当てた集団グループにおける介入方法の検討、を行った。1)意味性認知症は大脳の側頭葉の萎縮により言葉の意味が分からなくなるなどの言語障害が出現するであるが、アルツハイマー病など他の認知症と比較して介護者の介護負担感に関する研究は極めて少ない。本研究では、認知症専門外来の意味性認知症の初診患者23名とその家族、さらに意味性認知症と同じ前頭側頭葉変性症の一類型である前頭側頭型認知症患者20名とその家族を対象として介護負担感に関する調査を行った。その結果、意味性認知症においては左側頭葉に優位な萎縮がみられる患者よりも右側頭葉に有意な萎縮がみられる患者の家族において介護負担感が強く、従来から介護負担感が高いとされてきた前頭側頭型認知症とほぼ同程度の負担感であることが明らかになった。また、意味性認知症介護者の介護負担感は患者の言語症状よりも心理・行動症状との関連が強いことが明らかになった。2)アルツハイマー病をはじめとする認知症介護者の介護負担感が患者の症状等に及ぼす影響についての縦断データの収集がほぼ終了した。研究最終年度である29年度に分析結果の公表が行えるよう、現在分析を進めているところである。3)介護負担感軽減のために、介護者が介護のポジティブな側面への気づきを得ることを目的とした集団プログラムの検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
28年度は熊本県における震災のため研究時間が十分に確保できなかったが、おおむね計画通りに研究を行うことができた。
研究1)の意味性認知症患者の介護負担についての研究に関してはすでに分析を終えており、結果をまとめた後、近い時期に国際誌への投稿を予定している。研究2)は本研究課題のメインテーマであるが、残りの縦断データの収集が終了したのちに分析を進め、29年度中には成果を公表する見込みである。研究3)では、介護者の介護に対するポジティブな側面への気づきを得るための介入のあり方についてさらに検討する。
28年度は熊本県における震災の影響で研究時間の確保が予定より困難であったこともあり、次年度使用額が生じた。29年度は従来通りの研究時間が確保できる見通しであるため、28年度の遅れを取り戻す予定である。
28年度は上記理由で研究成果を報告する機会が十分に確保できなかったが、研究データは計画通り収集できており、29年度には前年度分も合わせて国内外の学会で分析結果を報告し研究者間での情報の共有を行う。また、国際誌への投稿のための費用にも充てる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件)
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