研究課題
29年度は認知症患者介護者の介護負担感が患者自身に及ぼす影響について縦断的な分析を行った。認知症の行動障害・精神症状(BPSD)は家族の介護負担感に強く影響することが多くの先行研究で報告されている。一方、家族の強い介護負担感は患者へのネガティブな感情を誘発し、患者への不適切な対応により結果的に興奮や不安等のBPSDを強めるという悪循環が生じている可能性がある。本研究では、家族の介護負担感がその後の患者のBPSDに及ぼす影響について検討した。対象者は、2007年4月以降に認知症専門外来を受診した初診患者のうち、3年以上継続受診したアルツハイマー病の203名である。初診時のBPSD、認知機能、ADL、IADL、家族の介護負担感が、3年後のBPSD重症度を予測するかどうかを検討した。構造方程式モデリングによるパス解析の結果、初診時の患者のBPSDおよびIADL低下が、初診時の家族の介護負担感を介して間接的に3年後のBPSD重症度を高めていた。初診時の認知機能、BPSD、ADL、およびIADLが3年後のBPSDに及ぼす直接的な効果はすべて有意でなかった。BPSDの症状ごとに同様のパスモデルを作成したところ、興奮および易刺激性において同様の特徴を示した。これらの結果より、BPSDやIADL低下による家族の介護負担感が、3年後のBPSDに影響を及ぼすことが明らかになった。特に興奮や易刺激性に対する家族の負担感がそれらの症状を強化していた。BPSDへの対応等に関する家族心理教育や社会資源の利用による家族の負担軽減が、患者のBPSD軽減に有効であるだろう。
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