研究課題/領域番号 |
26780308
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研究機関 | 名寄市立大学 |
研究代表者 |
江連 崇 名寄市立大学, 保健福祉学部, 助教 (20725022)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 教誨 / 社会内処遇 / 近代 / 宗教 / 監獄 / 出獄人保護 |
研究実績の概要 |
本研究は近代日本における更生保護思想がどのようなものであったのか、またどのように変遷していったかを明らかにするものである。 その一環として2014年度は史資料の収集を主な目的としており、矯正図書館、国立国会図書館、大学図書館などにおいておおくの資料調査をおこなった。また、史資料収集とと並行して明治期に刊行された監獄関係の雑誌を用いて監獄関係者の思想を明らかにした。特に大きく2点①特に監獄関係者はどのように社会内処遇を捉えていたのか、②監獄内での感化活動である教誨と宗教の関わりをどのように捉えているかを明らかにした。①については出獄後の元被収容者に対しての自立を考え、海外の監獄の役割や社会内処遇の事情などを紹介し、また出獄人保護会の私案を提示し監獄関係者から意見を求めるなど、囚人が「再社会化」するためにどのような社会内処遇がよいかを議論していることが、特に施設内処遇と社会内処遇の連携についての議論の一部を明らかにした。②については「宗教と教誨」についての解釈や、その実施方法についての議論が頻繁に行われていたことが明らかになった。特に2つの点に焦点をあてていることがわかる。それは「監獄の教誨師を単一の宗教にするか、それとも諸宗教にするか」という点と「教誨方法に宗教を用いるか用いないか」という2点である。本研究では教誨と宗教に関するすべ店お議論を取り上げたわけではないが、1888年から1898年の10年間の議論はほぼ、この2点についてのものが中心であった。 以上の2点の研究によりいくつかの課題も得ることができた。例えば当時の社会状況を分析の視点に入れることの必要性であったり、監獄関係者以外の意見なども今後見ていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書作成当初の予定では2014年度は主に史資料の収集と整理を行うことを目的としていた。これについては矯正図書館、国立国会図書館、大学図書館などに資料調査へ出向き明治、大正期の新聞雑誌を中心に収集を行えた。また関係史資料の整理を行い年代、議論内容、著者別に整理を行い今後研究を進めるうえで活用できるようにしている。これについては順調に進展している。 また資料収集と同時に2015年度、2016年度に分析を進める下準備として議論の整理をおこない、第42回社会事業史学学会での発表と『道北福祉』第6号へ原稿を投稿した。これについてはまだ分析が不十分な点もあるため今後より分析を進めていく必要がある。 以上のように本来の目的である史資料収集に加えて次年度以降の計画を踏まえていくつかの発表を行えたため現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後も申請書に記載した通り資料調査と分析を同時に進めていく。その際、研究会や学会、論文の投稿を通して発表し社会福祉史、更生保護史の研究者等と意見交換をする。そのことによりフィードバックを得ることができ、本研究が推進できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より「物品費」での支出が大きくなってしまい。「その他」からの支出を予定よりも削減し充当することとした。そのため若干の余剰が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については資料整理の為に購入するファイル等の消耗品費に使用させていただく予定でいる。
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