本研究は近代日本における更生保護思想がどのようなものであったのか、またどのように変遷していったかを明らかにするものである。 2016年度は更生保護(出獄人保護)関係の役人、知識人、監獄職員などの思想についての整理、分析を昨年度に引き続きおこなった。研究実施計画では主に研究成果の発表を行う予定でいたが、これまでの調査状況と学会発表や論文への反応などから、引き続き今年度も資料調査も継続していくことが必要と判断し、継続して資料調査、整理、分析も行った。 資料調査については国立国会図書館、公文書館、公立図書館を中心に行った。調査では監獄、出獄人保護関係者の思想と共に、(元)被収容者の実態を把握することも意識的に行った。特に明治期における北海道集治監の状況について資料を収集、分析した。 今年度の研究成果については社会事業学会第44回大会において出獄人保護事業の運営方針についての議論を『大日本監獄協会雑誌』に掲載された出獄人保護関係者による論考を用いて発表をおこなった。また『道北福祉』第7号において論文を発表し、教誨や出獄人保護など福祉的視点にたった支援がなぜ行われるようになったのか、その社会的背景について北海道を対象として分析した。 明治期における「更生保護」に関する議論の多くは「個人への処遇」というよりも「良民」増加を目的としたものであり、「更生」の目的は「個人」よりも「国家」へ向けられるものが多数みられた。しかしなかには個人と向き合い、個人に合わせた処遇を重要視していた論考もいくつか散見できた。
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