本研究は、ソーシャルワーカーが持つべき能力として認識されてきたケアマネジメント能力について、教育現場において習得させるための手法について検討をすることを目的として実施した。ケアマネジメント技術を教授する科目(以下、ケアマネジメント演習)を担当する教員に対するヒアリング調査から、現在の社会福祉専門職養成教育では、ケアマネジメントは理論の教授、及び相談援助演習などによる演習が多くの養成校で設定されているが、それだけでは実用に耐えうる能力を身につけることが難しく、資格取得に必要な科目とは別に演習を重視した科目の設定が有効であることが示唆された。またケアマネジメント演習履修者に対するヒアリング調査からは、演習により利用者の背景を的確に把握するためのスキルの獲得、支援プラン作成に対して一定の効果があると聞かれた反面、科目の内容については不明瞭な部分も多いことから、フォローアップの機会が必要であることが示唆された。 これらの結果から、本年度は、卒業後に大学で学んだ知識を定着させるための手段として、若手現任者を対象とした事例検討会を実施した。当該事例検討会では、様々な種類のケースについて、アセスメント、プランニング、及び再アセスメントを経験することができるよう、1事例を3ヶ月おきに2回検討する方式をとった。また、事例提供者についても、若手から提出いただき、自身が直面しやすいケースになるように配慮を行なった。その結果、参加者は少なかったため、手法の構築を行うのに必要なデータ数が集まらなかったものの、参加者の反応は概ね良好であり、継続的な実施が望まれる声が生じている。またアンケート上ではアセスメントについては人生周期についての意識、クライエントの思考について、プランニングについては、生活目標の設定、目標達成に向かうための手順化などについて、回数を重ねるごとに意識が強まったことが明らかとなった。
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