本研究の目的は,児童養護施設に勤務する職員への面接調査,および全国の児童養護施設への質問紙調査を実施し,質的分析,量的分析の両側面から,児童養護施設において児童の措置変更が生じるプロセスとそれに関与する要因について明らかにすることであった。 研究期間1年目には児童養護施設に勤務する職員に対し,入所児童の措置変更について半構造化面接による面接調査を実施し,カテゴリー分析を行った。研究期間2年目は,より適切な分析を目指し,調査対象者を追加するとともに,研究期間1年目の分析結果について,児童養護施設の施設長より現場の視点から助言をいただき,適宜修正を加えながら最終的な分析結果を目指した。最終年度については,全国の児童養護施設を対象にした質問紙調査を実施する予定であったが,研究者の多忙により実施するに至らなかったため,これまでの調査結果を更に精査し,児童の措置変更プロセスにおいて,どのようなことが職員の支えになっているかについて,職員支援の視点から分析を行った。 研究期間を通じて得られた成果としては,質的分析より,児童養護施設における児童の措置変更プロセスは【子どもに関連する要因】【職員に関連する要因】【環境に関連する要因】【処遇方針の検討】の4カテゴリーから構成され,問題発生段階と検討段階の2段階となっていることが仮説モデルとして示された。また措置変更の発生を少なくするための試みとして,これまで継続してきた施設の形態にとらわれず,柔軟性を持たせた施設形態を取り入れるといった,児童養護施設の環境面への働きかけが効果を上げる可能性が示唆された。また,職員支援の視点からは,措置変更について,チームで検討し,チームで責任を持つことが職員の負担軽減につながることや,気軽に話ができ,愚痴を言い合える関係を持っていることが職員の支援となっていることが示唆された。
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