今年度は、DV被害者支援を行う支援者の実態に焦点を当て、特に支援者が提供する支援の質の向上の機会について把握するための調査データの分析を行った。具体的には、東京都・神奈川県のDV担当支援者を対象として郵送調査を実施してあったもののうち、量的データの分析に焦点を当てて分析と考察を行った。対象者は福祉事務所、女性相談センター、子ども家庭支援センターといった公的機関に所属するDV担当相談員352名を対象とした。具体的には支援者に求められている専門性を維持・向上させるための体制の現状を5件法で尋ね、さらにその現状を受けて支援者が得たいと考えているサポートについて記述式で尋ねた。 その結果、これまではDV被害者支援における支援の質の向上に向けた課題として、所属組織内・外における研修の有無や、研修参加をサポートする組織体制や制度改正を指摘するものにとどまっていた。しかし本調査結果から、DV担当支援者の支援の質の向上の機会の方策を探る上で、その種類に着目した際に、「外部研修」「内部研修」の他に、「同僚関係」や「上司・部下関係」といった支援者関係間においても実現可能な支援の質の向上の機会が潜在しているように思われ、すでに稼働している様子もわかってきた。一方で、DV担当支援者の実態として一人職場であったり、5年間の雇止めというルールが設けられている組織もあり、先に述べたような支援者関係を身近に持つことが困難であったり、持つことができてもすぐに別の組織へ移り新たに関係構築をせざるを得ない状況において勤務するDV担当支援者においては必ずしも有効とは言えず、この点が本調査の限界と言える。
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