本研究は、精神障害者リハビリテーションモデルの1つであるクラブハウスモデルの有効性や効果を日本・韓国・中国の3ヶ国に焦点を当て、現地調査等を通じた比較研究を行った。 最終年度(平成28年度)は、2016年11月に中国で開催された「第5回アジアクラブハウス会議」に参加し、中国本土におけるクラブハウスの動向等の情報収集を行った。また、2017年3月に世界のクラブハウスを統括している「Clubhouse International」の職員に対して、アジア地域におけるクラブハウスの発展へ向けた戦略等についてヒアリング調査を行った。 研究期間中、①韓国6ヶ所、中国本土2ヶ所のクラブハウスに対してのヒアリング調査、②アジアクラブハウス会議への参加(2014年、2016年)、③日本のクラブハウスに対する実態調査等を実施した。 3ヶ国のクラブハウスにおけるヒアリング調査等から明らかになった特徴は以下のようなことである。①韓国ではクラブハウスが精神障害者の権利擁護を展開する際の地域の拠点となっている。②中国では全国レベルで精神障害者の社会復帰施策が検討されており、中央政府が国内外で評価を得ているクラブハウスモデルに強い関心を示している。③日本では障害者総合支援法で規定された事業体系とクラブハウスモデルの理念に隔たりが生じているため、運営や活動が閉塞的な状況に陥りつつも、実践している5ヶ所のクラブハウスが連携を図りながら丁寧な活動をしている。 アジア地域は多様な社会性や文化性を有するからこそ、クラブハウスモデルが実践の基盤とする「国際基準」のような1つの軸(枠組み)を意識した取り組みを展開することで、精神障害者に対するリハビリテーションや地域における生活支援が発展していくと考えられる。よって、クラブハウスモデルは、地域の実情に応じた柔軟性のある、包括的・汎用的実践モデルとして評価できる。
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