研究課題/領域番号 |
26780330
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
木下 麗子 関西学院大学, 人間福祉学部, 人間福祉実習助手 (90632373)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | CBPR / コミュニティ・エンパワメント / 高齢外国籍住民 / 地域を基盤としたソーシャルワーク / 福祉アクセシビリティ / 文化的コンピテンス / 地域包括ケアシステム |
研究実績の概要 |
本研究では平成27年度に2つの調査を計画していたが、研究に進展があったため平成26年度に2つの調査を実施した。平成27年度は第二段階の調査結果の分析を行い、その成果について、学会発表および論文発表を行った。 第二段階の調査では、高齢外国籍住民の集住地域において社会福祉サービスの認知状況等に関して「日本人高齢者」と「在日コリアン高齢者」の比較を行った。分析は、民族による調査回答の特徴を把握するために民族集団を目的変数として二項ロジスティック回帰分析を実施した。分析の結果「集い場への関心」「社会福祉サービスの認知度」「介護保険サービス利用不安度」「地域包括支援センター認知度」「生計」「年齢」について関連が見られた。 調査結果は第一段階の調査で明らかになった「主体的に参加する集い場を活用した情報発信が福祉アクセシビリティの向上につながる」ことを支持するものとなった。 その後、調査を地域のソーシャルワーク実践に活用するCBPR(Community Based Participatory Research)の手法を用いて、当事者の方々と協働しながら民族を超えた集い場行事を実施する運びとなった。 平成27年度には地域における民族を超えた集い場づくり「和合の集い」を5回実施した。集い場の実行委員会のメンバーは自治会、民族団体、地域包括支援センター、社会福祉協議会、研究機関に所属する者を中心としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2つの調査を実施し、それぞれの成果については、学会発表と論文発表に加え、調査結果を活用した研修会、勉強会を実施した。 調査で明らかになった高齢外国籍住民の地域活動の機会の少なさに着目したことで、実践として国籍の枠を超えた集い場づくりに着手できた。第5回目となる韓日文化交流会では、地域の小学校を会場として180名以上が参加した。集い場づくりにより自治会組織との協働関係が形成されてきている。 また、神戸市や川崎市などの外国籍住民の集住地域における地域を拠点とした取り組みについても関係機関へのヒアリング調査を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
2つの調査においては、CBPRの方法論に則り、設計段階から当事者と協働関係を形成してきた。今後は集い場行事への参加者の声を次のアクションに反映することを計画している。それらのアクションを通じて高齢外国籍住民の集住地域における「地域を基盤としたソーシャルワーク」実践モデルの構築に取り組んでいく。 地域を基盤としたソーシャルワークは個を地域で支える援助と個を支える地域をつくる援助を同時並行で推進する点に特徴があり、それぞれを視点においた実践のあり方を検討していく。特に、個を地域で支える援助については、相談支援機関への実態調査を計画する。 尚、地域を基盤とするソーシャルワークの8つの機能においては、ソーシャルアクションに注目する。高齢外国籍住民の集住地域において個を地域で支え、個を支える地域をつくる援助によって地域を基盤としたソーシャルワークが展開されるとき、差別や排除の構造にアプローチが可能となる、という仮説においても検証を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
高齢外国籍住民の集住地域における地域を基盤としたソーシャルワーク実践モデルを構築するために「個を地域で支える援助」と「個を支える地域をつくる援助」のあり方について検討する。 平成27年度までの2つの調査研究、集い場づくりなどの地域での実践からは「個を支える地域をつくる援助」のあり方について検討することが可能である。今後は「個を地域で支える援助」のあり方について検討する。その方法として相談支援機関への実態調査を行うために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
「個を地域で支える援助」のあり方について検討するために、高齢外国籍住民の主な相談支援機関である地域包括支援センターや生活保護制度、生活困窮者自立支援制度に基づく相談支援機関への実態調査を実施する。調査の実施にあたっては、地域包括ケアシステム構築に向けた制度的背景を概観した上で、相談支援機関における外国籍住民の相談事例へのソーシャルワーク機能についてのリサーチを行う。 まずは、生野区の相談支援機関の拠点に向けて多文化に関連する事例についての質問紙調査を行い、その後具体的な事例の聞き取り調査を実施する。 調査研究においてはソーシャルワークの文化的コンピテンス機能に着目し、高齢外国籍住民の集住地域における「地域を基盤としたソーシャルワーク」実践モデルの構築に向けて、個を地域で支え、個を支える地域をつくる援助のあり方について検討する。未使用額は質問紙調査、事例の聞き取り調査にかかる費用に充てる。
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