在日コリアン高齢者の福祉的課題について、実施した2つの調査からは、10年前に同地域において実施された先行研究で指摘されていた高齢外国籍住民に特徴的な福祉的課題が未だ存在することが明らかになった。 量的調査である「社会福祉サービス認知状況等実態調査」では、日本人高齢者と在日コリアン高齢者を比較して分析した。在日コリアン高齢者に特徴的な課題には「地域活動への参加」が低く「社会福祉サービス」の認知度が低いこと等があった。先行研究時には設置されていなかった「地域包括支援センターの認知度」は日本人高齢者と比べて低位であった。「介護保険サービスの認知度」は、前調査より若干上昇していたが「利用不安度」については日本人高齢者より高かった。また「識字率」の上昇も見られたものの、これらが単純に制度の認知度を上昇させるというわけではないことが明らかになった。これらの結果を受けて、地域を基盤としたソーシャルワーク実践としてどのような実践が必要になるかを検討するために、調査報告書を関係機関へ配布し、地域包括支援センター、民族団体との研究会及び行政機関との懇談を実施した。 他方、調査はCBPR(Community Based Participatory Reserch)の一貫として実施したため、民族を超えた地域の集い場づくり「和合の集い」を計9回行った。これらの過程において自治会との協働関係構築の課題も明らかとなった。 今後の研究活動への視点としては、研究フィールドである当該地域においてさらに具体的な生活課題が浮き彫りになるような地域アセスメントを実施し、高齢外国籍住民の集住地域における地域を基盤としたソーシャルワークの展開について検討することである。
|