研究課題/領域番号 |
26780335
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
卯月 由佳 国立教育政策研究所, 国際研究・協力部, 主任研究官 (00718984)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 子どもの貧困 / 世帯収入 / 社会政策 / 日英比較 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、①国内外の先行研究と、日英の子どもを対象とした社会保障・社会福祉政策について文献・資料をレビューすること、②OECDで公表されているマクロデータから、日英の子どもの貧困率、ひとり親世帯の比率、親の就業率等を確認し、日英の共通点と差異について整理することの2つの課題に取り組み、研究を進めた。 ①について、英国では1997年から~2010年の労働党政権の時代に、子どものいる世帯への所得再分配、親の就業促進と賃金上昇、子どもの人的資本投資の3つの戦略を柱とする子どもの貧困対策が進められたが、同時期の日本で一定程度存在した貧困対策は、子どもの貧困を削減することを目指して戦略的に練られたものだったとは言えない。日本では2014年に「子供の貧困対策に関する大綱」が策定され、その中で経済的支援、保護者の就労支援、教育の支援、生活の支援が掲げられているが、これらの方向性は、上述の2000年代の英国の戦略と類似する部分もある。今後、具体的な政策立案を行う上で、英国の政策立案の方法のうち、特に目標設定と研究成果の活用について考察し、示唆を得ることに意義があると考えられる。 ②について、日英における戦略的な子どもの貧困対策の有無の違いは、子どもの貧困率の推移に反映している。OECD統計によると、2000年時点の子どもの貧困率は日本で14%、英国で15%だったのに対し、2009年時点には日本で16%に上昇する一方、英国では11%に低下した。ただしこのことは、必ずしも日本の子どものほうが英国の子どもよりもあらゆる面でウェルビーイングが低いという結果につながっているわけではない。世帯収入に基づく貧困が子どものアウトカムに与える影響の、国による違いについて引き続き検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分析課題を精緻化した上で、厚生労働省から「21世紀出生児縦断調査」のデータを、UK Data ServiceからMillennium Cohort Study のデータをそれぞれ入手し、基礎的な分析に着手したいと考えていたが、この点については達成できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の前半にはデータを入手し、分析に着手する。まず世帯収入が子どものアウトカムに与える効果について、日英それぞれのデータを用いて分析し、その結果を比較する。続いて、日英のそれぞれについて、世帯収入の効果が、親が子どもの発達・学習環境に支出するかどうかでどの程度説明されるか分析し、結果を比較する。この知見をもとに、低収入世帯の発達・学習環境を整備するための収入補助、または公共サービスの有効性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ分析に着手できなかったため、そのために予定していたデータ加工作業の研究補助者への謝金を支出しなかった。また、必要としていた資料の大部分が書籍やウェブサイトで入手可能となったため、英国への旅費を支出しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
先行研究に関する和書・洋書の購入、データ加工作業の研究補助者への謝金、論文の英文校閲謝金、研究成果発表を行うための旅費として使用する計画である。
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