本研究は、子どもの発達・学習に関するアウトカムが、世帯収入によりどのような影響を受けているか分析し、低収入世帯の発達・学習環境を整備するための収入補助、または公共サービスの有効性について検討することを目的としている。さらに、世帯収入の効果は、親の労働収入の効果により説明されるか、親の労働時間の負の効果が世帯収入の効果を相殺するか分析し、低収入世帯の収入増加策として、親の就業参加や賃金上昇が必要か、それとも直接的な収入補助のほうが有効か検討することも課題としている。 平成29年度は、「21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)」のデータを入手し、以下の課題について基礎的な分析を行った。①世帯所得、親の学歴、親の就業状況と労働時間、世帯類型により、子どもの意識、学習習慣、生活習慣と発育状態はどう異なるか。②世帯所得、親の学歴、親の就業状況と労働時間、世帯類型により、親の意識(費用負担感)や行動(投資行動、親子で過ごす時間)はどう異なるか。③世帯の可処分所得と子育て費用の変化の関連。④生育環境(世帯所得、親の就業パターン)が幼児期の発達に対してどのように影響するか。⑤生育環境や教育支出が小学校6年生時および中学生時の学校外学習時間、中学校卒業後の進路予定にどのように影響するか。 これらの分析結果と、前年度までに得た分析結果および所得保障に関する理論的枠組みをもとに、政策インプリケーションについて議論するとともに、今後必要なデータについても議論した。
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