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2014 年度 実施状況報告書

時間割引と存在論的恐怖-認知神経科学からのアプローチ-

研究課題

研究課題/領域番号 26780342
研究機関京都大学

研究代表者

柳澤 邦昭  京都大学, こころの未来研究センター, 研究員 (10722332)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード存在論的恐怖 / 時間割引 / 未来展望 / 生の有限性 / fMRI / 認知神経科学
研究実績の概要

平成26年度は,機能的核磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging: fMRI)により,存在論的恐怖(死がいつ訪れるかは予測不可能であり,不可避であるという認識から生じる不安や恐怖)が時間割引(遅延時間の経過に伴う報酬価値の減衰)に及ぼす影響について検討した。より具体的には,fMRIの中で実験参加者に将来起こり得る出来事として死関連の出来事を想像してもらい,その後に,異時点間報酬選択課題を行い,すぐに得られる少額報酬と,すぐには得られない高額報酬に対する実験参加者の選好過程を測定した。加えて,実験後には報酬選択に関連し得る個人特性(衝動性など)や環境要因に関して質問紙調査により回答を得た。実験の結果,死関連の出来事を想像した後では,死とは関連の低い出来事(ネガティブ,ポジティブ,ニュートラル)を想像した場合よりも,すぐに得られる少額の報酬を選択する傾向が増加することが確認された。このような結果は,人が未来を展望する上で,死関連の出来事は他の出来事とは異なるものとして情報を処理し,遅延報酬の選択と関連付けていることが考えられる。今後は,これらの心理的現象の背景にある脳のメカニズムを特定するためにMRIで撮像した画像データについて詳細な解析を施し,また種々の調整要因との関連を明らかにする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

平成26年度においては,存在論的恐怖が時間割引に及ぼす影響について,行動指標及び生理指標の観点から検証を試みた。行動指標に関して得られた結果は仮説との整合性が高く,またネガティブな情動を含む未来想像とは異なる影響過程として,死関連出来事の想像の影響を示すことが出来た点で大変意義あるものである。加えて,画像解析に関しても,ターゲットとした脳領域(e.g., 未来展望に関与する領域)において,ネガティブ情動を含む未来想像とは異なる活動が,死関連の出来事の想像において確認された。これらの知見は,未来展望の観点から死の特異性を捉え直す契機となり得るものであり,当該分野において独創性が高く,学術的貢献をなすものである。さらには,生の有限性と報酬処理の関連を見出したことで,現代社会に潜む多様な報酬接近行動の問題に対して新たな解釈を提示する。これらの研究成果は,当初計画されていたものを少なからず超えるものである。

今後の研究の推進方策

これまでの研究成果をさらに発展的に推し進めるため,個人特性や環境要因との関連について検討する。具体的には個人特性としての衝動性や環境要因としての社会経済的地位に着目することで,存在論的恐怖が時間割引に及ぼす影響に対して,説明力の高いモデルを提唱する。さらに脳機能画像解析を進めることによって,存在論的恐怖が時間割引を増加させる脳のメカニズムを特定するよう取り組む。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由としては,当初予定していたデータ記録媒体の購入を控えたためである。これは現在所有している記録媒体で,平成26年度の実験で得たデータの記録が完了したためである。

次年度使用額の使用計画

平成27年度も26年度同様に実験を行うため,その際のデータ記録媒体の購入費用として使用する。

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公開日: 2016-06-01  

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