平成27年度は、前年度に実施していた機能的核磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging:fMRI)を用いた実験の追加データを取得し、行動指標および画像データに関して解析を行った。データ解析の結果、将来の死を想像することは、時間優先の報酬選好を促すこと、そして、将来の出来事を想像する際には未来思考に関わる内側前頭前野や楔前部の賦活が確認されるが、将来の死を想像する際にはそれらの領域が活動しにくいことが示された。また、これらには個人差の影響も強く反映され、熟慮性の高い者で死を想像した際の時間優先の報酬選好が顕著であり、未来思考に関わる脳領域、プランニングに関わる脳領域、報酬処理に関わる脳領域の活動が強いことが示された。したがって、これらは死を想像することは熟慮型の認知に依存し、その認知を介し現在や将来の報酬価値を修飾することを示唆する。
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