平成28年度は、平成27年度に投稿中であった論文の改稿作業、新たな論文の執筆と投稿作業、そして平成26年度から継続してデータを取っていた実験を完遂した。 平成26年度に実施した実験は平成27年度末にPLoS ONE誌に投稿し、平成28年度は改稿作業を進めた。その結果、平成28年度中に論文の掲載が採択され、5月に掲載された。 2013年に掲載された論文によって、最小条件集団実験状況において先制攻撃ゲームにおける内集団バイアス(外集団相手の場合に内集団相手よりも攻撃率が高まる現象)が生じないことは確認されていた。しかし、先制攻撃ゲームで内集団バイアスが生じないことを示した研究はこのひとつに限られていたため、追試研究を論文化する必要があった。平成28年度は山岸俊男氏、Dora Simunovic氏との共同研究として実施した追試研究を論文化した。異なるパラメータにおいてもやはり最小条件集団における先制攻撃の内集団バイアスが生じないことを示した知見はFrontiers in Psychology誌に平成28年度中に掲載された。 PLoS ONE誌に掲載された論文により、自分が相手よりも攻撃力が高い状況では相手への攻撃率が高まらないが、相手が自分よりも攻撃力が高い場合に攻撃率が高まる可能性があることを示唆されていた。この、相手の攻撃力の増加に伴う攻撃率の上昇が、特に外集団に対して働く可能性を検討するため、自分と相手で攻撃の効率が異なる先制攻撃ゲームを実施した。この実験は平成26年度末から平成28年度も継続して実施し、予定していたデータ数とほぼ同じ222名のデータを得た。実験の結果は予測通り、攻撃の効率が同じ場合と自分の方が大きい場合は内集団相手と外集団相手で攻撃率に差が見られないが、相手の攻撃効率が大きい場合には内集団相手よりも外集団相手の攻撃率が高くなった。
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