本研究は,英単語を効率的に学習していくプログラムの開発を最終的な目標とし,その前段階として,同時に学習するのに最適な単語の組み合わせを実験により明らかにするものである。近年の研究により,繰り返しの検索練習を行うことがその単語の長期的な保持につながることがわかっている。さらに,同時に学習する単語の組み合わせによっては一部の単語の検索練習が検索練習しない単語を思い出しやすくしたり,反対に思い出しにくくすることがわかっている。ただし,これらの研究は外国語の単語の学習では検討されていない。本研究では,同時に学習する単語同士の意味的な類似性を操作して,促進的な効果が大きく抑制効果が小さい組み合わせを明らかにすることを目的とした。まず,実験のための準備として,記銘語の選定を行った。記銘語の選定にあたっては,申請時点では英単語熟知度データベース(梶上・寺澤・後藤・須藤,2002および寺澤,2003)に基づいて作成する予定であったが,単語間の類似度を変数とした記銘語リストを作成することが困難であることがわかった。そこで,オックスフォード英語類語辞典(小学館発行の翻訳版)の類語スケールを利用して作成することにした。類語スケールに基づき,意味的類似度を変数とすることが可能な記銘語リスト(高・中・低)を作成した。最終年度は,類似度を変数として二つの基準(類似度 高・低)を設定し,検索練習による促進効果および抑制効果について実験的に検討した。その結果,検索練習した単語と意味的に類似していない単語では促進効果がみられたのに対し,類似している単語ではいずれの効果もみられなかった。これらの結果を総合すると,英単語学習においては検索練習による非検索語への負の影響は生じず,むしろ正の効果が生じることから,意味的に類似した単語を同じタイミングで学習することで,検索練習による正の効果を最大限に生かせるといえる。
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