本年は,手指を使った数え方について,成人と児童期で比較した。これまでの研究結果から,西洋では,左手の親指に1をマッピングし,順に,人差し指,中指,薬指,小指,右手の小指,薬指,中指,人差し指,そして最後に右の親指を10と数える人の割合が圧倒的に多かった。しかし,日本の成人では,西洋と同じ数え方をした人はほとんどおらず,左の親指から数え始める割合と右手の親指から数え始める割合はほぼ同じであった。また,日本では,左から数え始めた場合は6を右の親指,右から数え始めた場合は左の親指にマッピングする割合が高く,右手の小指に6をマッピングする西洋とは対照的な結果であった。一方で,児童期の手指を使った数え方を見ると,日本の成人とも異なる数え方をしていた。成人と比べると,児童は人差し指に1をマッピングする割合が大きく,親指に1をマッピングする割合が小さかった。くわえて,左手から数える割合も成人よりも多く,右手から数える割合は少なかった。幼児期の数活動を観察すると人差し指でモノをさして数える場面がみられることから,人差し指に1がマッピングされやすいことが考えられる。左から数える割合が高かったことについては,右利きの人が指差しして数える場合は身体の構造上左から右に数えるほうが自然である。実際,参加者の多くは右利きであり,この行為の痕跡が残っていた可能性がある。今後は,手指を使った数え方に変化を与える要因について検討する必要がある。
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