研究実績の概要 |
本年は,5-6歳児を対象に計算能力,計算時の手指の利用および手指イメージとの関係について検討した。特に,これまで計算時の手指の利用と手指イメージ能力の関係については検討されておらず,手指を頭の中で鮮明にイメージできるようになることで,実際に計算時に手指を使わなくても計算できるようになるのかについては明らかになっていなかった。 計算能力,指の利用割合,視空間記憶および手指イメージ間の関係を検討するために,月齢を統制した課題間の偏相関係数を算出した。その結果,計算成績は,視空間記憶および手指イメージとの間に相関がみられた(順にr=.316, p<.05とr=.671, p<.01)が,指の利用割合との間に関係は見られなかった(r=.116, p>.05)。また,計算成績を従属変数,指の利用割合,視空間記憶および手指イメージを独立変数として,重回帰分析を行ったところ,手指イメージの偏回帰係数が有意であった(β=.667)。足し算には手指のイメージが強く関係していることが示唆された。 次に,足し算得点と指の利用割合を用いて,潜在ランク分析を行ったところ,2群に分類された。ひとつは,足し算得点は高いが,指の利用割合が低い群,もうひとつは足し算得点は低いが,指の利用割合は高い群であった。この2群を独立変数,手指イメージを従属変数としてt検定を行ったところ,足し算得点は高く指の利用割合が低い群の方が,足し算得点は低く指の利用割合が高い群よりも,手指イメージ能力が高いことが示された(t(47)=2.384, p<.05)。したがって,手指を利用しなくなって計算を正確にできている子どもは,頭の中で正確に手指のイメージを描けていることが示唆された。
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