本研究の目的は,高校中退における予防プログラムを開発することである。具体的には,中退高リスク群をスクリーニングするための尺度の作成と,介入プログラムの開発が挙げられる。 文部科学省によれば,平成22年度の高校中途退学者数は約 5 万5千人であり,在籍者に占める中途退学者の割合(中退率)は1.6%であった。特に,教育困難校における中退率の問題は深刻な状況であった。こうした中退を予防するための知見を得るには,中退者の学校適応状態がどのようなものだったのかを在学中から把握しておく縦断的な研究が必要と言えるが,筆者の知る限りではこうした方法で開発された尺度やプログラムは存在しない。また,予防プログラム研究では近年,普遍的予防,選択的予防,指示的予防といった包括的な観点からの研究が行われている。これらの予防的な観点から,尺度や介入プログラムの作成を行ったところに,本研究の独自性がある。 研究の1年目では,中退の高リスク群のスクリーニングを目的とした尺度の作成を行った。先行研究を参考にしながら47項目の原案を作成し,全日制高校,定時制高校,通信制サポート校の生徒を対象に2回の質問紙調査を実施した。項目分析,因子分析等を通して項目を精査し,7因子33項目からなる尺度(RASH-HD)を作成した。生徒の将来の登校状況との関連をカイ二乗検定で検討したところ,予測的妥当性が確認された。さらに,介入プログラムとしては6回に渡るソーシャルスキルトレーニングを作成し,定時制高校にて応募者が実施した。その結果,当該プログラムの効果が確認された。 研究の2年目(最終年)では,作成したソーシャルスキルトレーニングの一般性を確認するために,応募者ではなく担任が実施しても効果が得られるのかを検討した。その結果,心理学の専門家である応募者ではなく,担任が実施した場合にも,同様の効果が得られることが確認された。
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