研究課題
社会的動機付けを測定するため、構成概念的に近いものを測定していると考えられるCheek & Buss (1981) のSociability尺度(5項目)をもとにそれを拡張し、フィラー、逆転項目を含む全30項目の質問紙を作成した。定型発達者を対象に、実験室およびオンラインでの調査により、社会的動機付け質問紙データと顔状刺激・非顔状刺激に対する印象評定データを収集し、個人内における両者の間の関連性について検討を行った。結果、実験室調査とウェブ調査、両方のデータセットにおいて、社会的動機付け質問紙の得点が高い人ほど顔状刺激に対して顔らしいと評定しやすいという有意な正の相関が見られた。しかし、この相関関係は有意ではあったものの、弱いものであり、尺度得点と顔状刺激への評定の間の相関と、非顔状刺激への評定との間の相関との差は、ウェブ調査でのデータでは統計的に有意であったものの、実験室調査でのデータでは有意な差には至らなかった。また、自閉スペクトラム症者および定型発達者を対象に、社会的事物の通状況的学習についての実験データを収集した。結果については、Social Communication Questionnaire (SCQ) 内の社会的動機付けに関わる回顧的項目の得点やAutism Diagnostic Observation Schedule (ADOS) 内の社会的動機付けに関わる項目の得点との関連を含め、現在解析中である。また、これまで自閉スペクトラム症児者と定型発達児者を対象に長期的に行ってきた社会的認知に関わる認知実験や事象関連電位のデータと各社会的動機付け関連指標との関連性についても検討中である。
2: おおむね順調に進展している
研究結果と予測の間の齟齬により計画の変更を要するものの、代替的な方法により当初の研究目的を検討することが可能であり、また、それにより研究成果の提出が予想できるため。
自閉スペクトラム症者、定型発達者における社会的認知特性を引き続き明らかにするとともに、社会的動機付けとの関連について検討を行う。
今後2ヵ年研究を継続するにあたり初年度の支出を抑えるべきであり、実際に抑えることができたため。
実験参加者への謝金や実験に関わる物品費、眼球運動追跡装置による注視データの解析に関わる謝金、国際学会への参加に伴う旅費などに使用する予定である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
Autism Research
巻: 7 ページ: 590-597
10.1002/aur.1397