研究課題/領域番号 |
26780360
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
明地 洋典 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (50723368)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自閉症 / 社会的認知 / 社会的動機付け / 認知神経科学 |
研究実績の概要 |
社会的コミュニケーションを測定する保護者記入式の質問紙であるSocial Communication Questionnaire(SCQ)および半構造化観察検査であるAutism Diagnostic Observation Schedule(ADOS)を指標とし、社会的認知に関わる課題の指標との関連性の検討を行った。SCQおよびADOSを用いた理由としては、平成26年度に作成した質問紙の妥当性が実用に足るものでなかったことと、自記式質問紙では対象者が児童である場合にデータ収集が困難であることがある。SCQとADOSは自閉症研究で広く使用されており、社会的動機付けが測定項目に含まれる対人応答性尺度(Social Responsiveness Scale; SRS)とも強い相関を示すため(Charman et al., 2007)、社会的動機付けの指標として適していると考えられる。平成27年度および以前に行った実験のデータをもとに検討を行った結果、自閉症群と非自閉症群(小/中/高校生・成人)、両群において、視線検出課題、顔状刺激検出課題、顔様刺激への評価判断・事象関連電位(脳波)、社会・非社会的事物の統計的語彙学習課題、すべての課題の指標とSCQ得点との間に統計的に有意な相関関係は確認されなかったが、唯一、道徳判断時に心を考慮する傾向との間に強い負の相関関係が確認された。このことは、社会的動機付けは、少なくとも就学期以降の自閉症児・者の比較的基礎的な社会的認知・行動(例.社会的刺激の検出)とは無関係であるが、社会的相互作用に直接的に影響を与えると考えられる複雑で高次な社会的認知・行動(例.心を考慮した道徳判断)とは大きな関連性があることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究結果と予測の間の齟齬により計画の変更を要したものの、代替的な方法を用いることで、実証的に検討を行うことが可能であり、また、それにより研究成果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
自閉症者、非自閉症者における社会的認知特性、特に、より高次な側面に焦点を当て、社会的動機付けとの関連について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画を進めるにあたり、予定よりも謝金・人件費が小額で済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験実施やデータ解析に伴う物品費、実験参加者や実験補助者への謝金、成果発表に伴う出版費等に使用する。
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