研究課題/領域番号 |
26780368
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
山本 晃輔 大阪産業大学, 人間環境学部, 講師 (60554079)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 嗅覚 / 未来事象 / 自伝的記憶 / 加齢 / 展望的記憶 |
研究実績の概要 |
平成27年度は大別して2件の研究を行った。研究1では,26年度に引き続き嗅覚手がかりによって喚起される過去および未来事象の特徴の解明を目的とした。研究2では,嗅覚手がかりによって喚起される過去および未来事象に加齢が及ぼす影響を検討した。いずれも高齢者や若年者を対象として,日常の中で嗅覚手がかりによって過去や未来の事象が喚起された時に,その内容や状況等を日誌に書き留める日誌法という方法を用いた。 研究1では,昨年度の集めたデータをもとに分析を行った結果,嗅覚手がかりによって想起される未来事象と,視覚や聴覚等の他の手がかりによって想起された未来事象とではそれらの特性が異なることが明らかになった。また,嗅覚手がかりによる未来事象と過去事象との比較を行った結果,両者の特性には違いがみられること,情動知能や嗅覚イメージ能力などの個人差要因の影響が過去と未来の事象とで異なることが明らかにされた。これらの研究は,日本認知心理学会第13回大会および日本パーソナリティ心理学会第24回大会にてそれぞれに発表された。研究2では,嗅覚手がかりによって喚起される過去および未来事象における若年者と高齢者による違いが検討された。その結果,若年者の方が高齢者よりも快感情を伴い,かつ重要であり,鮮明な特性をもつ未来事象が喚起されることがわかった。これらの知見は平成28年度の学会で発表予定である。関連する研究発表も含め,平成27年度の学会発表件数は計7件であった。 学術論文として,「嗅覚と自伝的記憶に関する研究の展望-想起過程の再考を中心として-」が心理学評論誌に掲載され,その他関連論文も含めて計3編が審査の結果採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,2件の研究を行い,学会発表を7件行った。またその一部を3編の論文とした。中心的な課題であった高齢者を対象とした検討を行うことができたが,想定よりもデータの回収率が低かったことから,この点については次年度も引き続き検討する予定である。研究状況は,おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究では,高齢者を対象として加齢の影響を検討することができたが,データの回収率が低かった問題がある。この点を引き続き検討し,十分なデータの回収に努めたい。また,これまでの知見をもとに嗅覚手がかりが未来の行為を生成させるメカニズムに言及した論文を執筆予定である。さらに最終年度であるので,研究の総括を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
高齢者人材派遣センターでのデータ回収率が想定よりも低く,その分の謝礼に余剰が生じたこと,論文の審査が長引いたため論文抜刷料金の請求が次年度に持ち越されたことなどが理由として考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に引き続き,高齢者人材派遣センターに依頼し,高齢者を対象としたデータを十分な量回収する必要があるため,参加者への謝礼が必要となる。また,データ入力,分析補助の人経費,平成27年度の研究成果を発表する出張費,掲載論文の審査料,抜刷代等が主な使用額にあたる。
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