筆者が行った中学校における問題行動と生徒指導に関する研究では,中学生の学校適応を問題行動と向学校的行動の2つの指標から捉えた。生徒指導は,能動的関わりと事後的関わりの2つの指標から捉えた。中学3年間の中で,問題行動と向学校的行動がどのように発達していくのか,また学年に応じて,教師はどのような関わりをする必要があるのかを筆者は明らかにした。その結果,中学2年次の向学校的行動によって中学3年次の問題行動が抑制されること,中学2年次の向学校的行動を促進するためには,中学2年次に能動的関わりを重視することが明らかにされた。 ここで明らかにされたのは中学3年間の学校適応のみであった。小学校からの学校生活を土台に中学校の学校生活が始まることをふまえると,小学校から中学校への移行期において,問題行動と向学校的行動がどのように発達するのか,また小学校から中学校に進級していく中で,教師はどのように子ども達に働きかけたらよいのかを明らかにする必要があった。そこで小学校4年生から小学校6年生までの3年間にわたって縦断調査を行い,児童期において問題行動と向学校的行動がどう発達していくか,また教師は児童期の学校適応を促進するために,どのように関わったら良いのかを明らかにすることが目的であった。昨年度の調査時に5年生だった小学生に追跡調査を平成30年3月に実施した。公立小学校6校にアンケートを送付した。対象は平成29年度に6年生である279名であった。また公立小学校と同じ学区にある中学校2校でも調査を実施した。中学1年生236名,中学2年生240名が対象であった。この調査により,小4,小5,小6の3年間にわたる縦断調査データを得ることができた。
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