研究課題/領域番号 |
26780383
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
高柳 伸哉 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (20611429)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 健康心理学 / 健康開発 / 自閉症スペクトラム障害 |
研究実績の概要 |
2014年度より所属大学が変更(浜松医科大学→弘前大学医学研究科)となったことに伴い、研究フィールドも新たに開拓することとなった。 そのため活動フィールドを確保することを目的とし、近隣の市教育委員会や学校を訪問し、本研究の目的や必要性の提示、また結果のフィードバックと児童生徒への日常指導・支援への活用方法について説明し、協力を得る取り組みを行った。 9月には児童生徒の発達把握と心の健康増進に積極的な教育委員会の支援と校長らの理解をいただき、市内小中学校のうち半数を超える29校(小学校17校、中学校12校)に、今年度中の調査協力を得ることができた。11月に児童生徒合計約6,000名とその保護者に調査用紙を配布し、小学生1~6年生3,836名・保護者3,658名分と中学生1~3年生2,131名・保護者1,971名分の有効回答を得た。質問紙には精神的健康として抑うつ・攻撃性、リスク要因として発達特性・ストレス、保護要因としてソーシャルサポート・嫌なことへの対処法を測定する尺度を用いた。 東北地域の小中学生を対象とした大規模横断調査の結果、学年が上がるごとに抑うつが上昇していく傾向がみられるものの、小学校低学年においても10%程度の児童に抑うつ得点カットオフを超える者がみられることが示唆された。その後に保護要因を含めた分析を行った結果、各種ストレスや嫌な出来事を繰り返し考える反すう傾向が抑うつ・攻撃性を強める一方、友人ソーシャルサポートや問題解決が抑うつ・攻撃性を緩和しうることが示された。調査結果は各学校に返却し、児童生徒のこころの健康把握と日常指導・支援に活用された。 市教育委員会とは2015年度にも連携して継続した調査・支援を行うことを計画しており、今後は縦断的な検証を用いて、児童生徒にみられる自閉症傾向と精神的健康との関連、保護要因の検証を進めていく計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所属の変更による研究フィールドの再開拓が本研究の大きな懸念材料となったが、近隣地域の教育委員会・学校現場の理解と協力を得られたことにより、初年度から約6,000名への調査実施を行うことができた点は当初の想定を越えた。本研究の目的・効果も概ね肯定的に捉えられており、継続した取り組みにしていくことを市教育委員会や校長会にて確認いただいている。 一方で、新たな地域での研究フィールド開拓と調査実施実現に割く労力は非常に大きく、発達特性と心の健康、対処方法などとの関連の検証など、多様な検証は進められていない。また支援授業の開発について、教育委員会への説明と学校への訪問授業として実施可能な体制を準備しているものの、具体的な実施の目処はたっていない。現在は市の教育センターで請け負う支援の一メニューとして位置づける方向で相談・検討している。今年度の地域の児童生徒調査の結果も踏まえ、自閉症特性のある児童生徒の心の健康促進に効果的な支援授業の開発と具体的な内容の改善を進めていくことが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
すでに2015年度の取り組みの概要については、4月に市教育委員会・校長会にて説明し、継続した実施を確認いただいている。 今後は、市教育委員会など教育現場からの意見も取り入れ、効果的かつ実現性の高い調査・支援活動に発展させていくことを目指す。 具体的には、調査時期を8月末~9月頃に前倒しをし、結果の返却を12月中にして年度内の児童生徒の把握と支援に活用していただけるように改善する。また、自閉症傾向の測定結果を用いて、小中学校児童生徒における自閉症傾向と精神的健康との関連や保護要因の検証を発展させる。さらに、2014年度の結果から効果的な支援プログラムの開発を行い、教育センターの支援と連携した学校支援としての支援プログラム実施を実現させていく計画である。 市教育委員会・学校現場の児童生徒の発達特性理解と心の健康促進へのニーズは高く、今後も積極的な協力・助言を得られる体制となっている。
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備考 |
個人情報や結果について地域の敏感な反応への懸念もあり、分析結果等は掲載していない。一方、得られた成果については協力児童生徒・保護者への返却、学校での指導・支援への活用、各種研修会等での知見の紹介に反映し、地域貢献・スキルアップ等に活用している。
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