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2015 年度 実施状況報告書

自閉症スペクトラム児の適応を促進するプロテクティブ要因の検証と支援授業の開発

研究課題

研究課題/領域番号 26780383
研究機関弘前大学

研究代表者

高柳 伸哉  弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (20611429)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード健康心理学 / 健康開発 / 自閉症スペクトラム障害
研究実績の概要

H26年度における地域の市教育委員会との連携構築や調査研究フィールドの開拓と、試行的な調査実施・結果の共有による子どもの発達の特徴と心の健康把握の必要性について確認したことを基盤とし、H27年度には提携市教育委員会における公立全小中学校と弘前大学附属小中学校の児童生徒とその保護者を対象に調査を実施した。前年度と同様の調査尺度構成で行った結果、本人評定では児童生徒合計12,599名(回収率98.6%)、保護者評定では児童生徒10,747名(回収率84.1%)の回答を得られ、多くの協力をいただいた。
今年度データの分析の結果、抑うつについてはH26年度における約6,000名のデータと同様の傾向が見られ、学年が高いほど抑うつ得点やカットオフを越えた児童生徒の割合も高いこと(小1ー3=15.5-20.0%; 小4-6 = 18.4-23.0%; 中1-3 = 25.3-33.7%)が示された。一方攻撃性については、H27年度ではカットオフを越えた児童生徒の割合も各学年において14.6-19.7%と抑うつほど大きな差はなかった。しかし、学年・性別による二要因分散分析の結果からは、抑うつ・攻撃性とも有意な交互作用が示され、学年・性別による違いが示された。
また、ASSQ得点と各尺度の相関分析を用いた保護者評定による自閉症スペクトラム傾向と心の健康、リスク要因・保護要因との関連検証では、本人評定の抑うつと攻撃性、友人関係問題、反すうに有意な正の相関(r = .091-.299)を示す一方、友人サポートや大人サポート、問題解決では有意な負の相関がみられた(r = -.215-.108)。さらに、自閉傾向は保護者評定のSDQ総合困難度と中程度の有意な正の相関(r = .614)を示し、保護者の把握では自閉傾向と生活不適応の関連の高さがうかがえた。
最終年度ではさらなる分析と発表を進める予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

H26年度における所属の変更のため、調査研究の実施・教育現場との連携構築からの基盤づくりから開始することとなったが、市教育委員会による全面的な理解と協力が得られたことから、2年目にして全公立小中学校での調査が実現し、また任意調査であるものの非常に高い回収率で児童生徒とその保護者からの協力を得られた面は、想定以上であった。
しかし、調査結果の共有や教育現場への研修等による還元という点に注力したことから、申請時点における自閉症スペクトラム児への効果的なプログラム開発と実施までは実現が難しい状況となっている。
一方、教育委員会との連携、教育現場への結果共有の取り組みなどから、地域における発達障害の理解と啓発、関わり方の研修の要請や、小中学校教員への一律研修、段階的な研修システムの提案など、地域の教育機関からの要請も挙げられるようになってきた点は、長期的にはさらなる研究と地域支援につながると考えている。

今後の研究の推進方策

市教育委員会と各学校の連携協力基盤が構築され、同一市内における小中学生1万人超の調査協力から、膨大なデータが集積されることになった。簡易分析による教育現場との結果共有と活用法の提示などの還元を行っている一方で、より高度な分析や研究成果発表までは取り組めていないことが研究的な課題となっている。そのため最終年度となるH28年度の活動では、調査研究と地域への還元を維持しながら、得られた成果の学術的なまとめと発信に注力していくことで、社会的な成果として発信していくことを目指す。

次年度使用額が生じた理由

データ入力・整理のために依頼していた者が、2・3月に体調不良等の事情で従事できなかった。そのため、当初予定していた人件費・謝金分において20,799円の残額が生じた。

次年度使用額の使用計画

平成28年度が最終年度となることや、学会発表・論文化における作業において、データ整理作業などの従事者を雇用する予定である。残額分の時間を追加し、効果的なデータ分析・成果発表のために活用する計画としている。残額から算出すると、従事者1人を1日3時間で6日間分雇用する予定である(1人×3時間×6日=18,000)。

備考

個人情報への配慮や結果の誤解等のリスクを懸念し、データ分析の結果等は示していない。
協力いただいた児童生徒・保護者や市教育委員会・各学校への感謝、説明・研修会の開催に関して紹介し、協力者と地域への還元を行っている。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] ASSQ短縮版の5歳児適用における妥当性2016

    • 著者名/発表者名
      足立匡基・髙柳伸哉・吉田恵心・安田小響・大里絢子・田中勝則・増田貴人・栗林理人・斉藤まなぶ・中村和彦
    • 雑誌名

      児童青年精神医学とその近接領域

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ADHDのスクリーニングと診断・評価―CAARS/CAADID2016

    • 著者名/発表者名
      髙柳伸哉
    • 雑誌名

      臨床心理学

      巻: 16 ページ: 33-37

  • [学会発表] Risk and Protective Factors of Depression in Children with ASD Tendency in Japan2016

    • 著者名/発表者名
      Nobuya Takayanagi, Masaki Adachi, Sayura Yasuda, Satomi Yoshida, Michito Kuribayashi, Kazuhiko Nakamura
    • 学会等名
      The International Meeting for Autism Research (IMFAR) 2016
    • 発表場所
      Baltimore Convention Center, One West Pratt Street Baltimore, Maryland, USA
    • 年月日
      2016-05-11 – 2016-05-14
    • 国際学会
  • [学会発表] 小中学生における発達特性と抑うつ、不適応の関連2015

    • 著者名/発表者名
      髙柳伸哉・足立匡基・安田小響・吉田恵心・栗林理人・大里絢子・斉藤まなぶ・中村和彦
    • 学会等名
      日本児童青年精神医学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜、神奈川県、横浜市
    • 年月日
      2015-09-29 – 2015-10-01
  • [学会発表] 発達特性傾向、ストレス要因と攻撃性の関連2015

    • 著者名/発表者名
      吉田恵心・髙柳伸哉・足立匡基・安田小響・大里絢子・斉藤まなぶ・栗林理人・中村和彦
    • 学会等名
      日本児童青年精神医学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜、神奈川県、横浜市
    • 年月日
      2015-09-29 – 2015-10-01
  • [備考] 弘前大学大学院医学研究科附属子どものこころの発達研究センター 活動内容

    • URL

      http://www.med.hirosaki-u.ac.jp/~kodomono/activities.html

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公開日: 2017-01-06  

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