研究実績の概要 |
最終年度となる2016年度では、これまでの研究データの分析と成果発表、研究知見の活用検討を行った。東北地域における小中学生を対象とした本人・保護者の有効データは、調査フィールドを開拓した2014年度で3,561名、2015年度には6,633名に及んだ。膨大なデータ量のため、縦断分析に用いるデータ結合は十分に進められていないが、各年度ごとでの分析を行った。その結果、保護者回答による自閉症スペクトラム傾向は保護者評定による子どもの生活適応を阻み、不適応につながりうるとともに、小さい効果ながらも子ども本人の評定によるソーシャルサポートの減少や各種ストレスへの増大、抑うつ・攻撃性の高さにもつながることが示された。自閉症スペクトラム傾向による生活適応への影響は多くの先行研究で示されているが、東北地域の数千人規模の調査結果からも同様の傾向が確認され、一般小中学校における発達障害理解と支援の重要性があらためて示された。 一方、保護者評定による自閉症スペクトラム傾向が高い子どもにおける、抑うつや攻撃性の低減につながる適切な対処法と増加につながる不適切な対処法が確認された。また友人や周りの大人などのソーシャルサポートを高めることで、抑うつを低減しうることも示された。これら不適応を軽減し心の健康を増進するプロテクティブ要因について、自閉症スペクトラム傾向が高い子どもであっても、適切な対処法を増やし不適切な対処法を減らす働きかけを一般小中学校レベルで広げていくことで、メンタルヘルスを改善しうる有効性が示唆された。 成果発表では、国際学会における報告2件と本研究に関連した研究成果について国際誌に掲載された。 本研究では研究フィールドの変更などの計画修正があったため、研究知見の現場への導入に進めることはできなかったが、今後は研究成果の活用方法の検討や効果的な普及を目指すための方策が必要となる。
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