研究実績の概要 |
幼児の抑制機能と問題行動の関連を検討した研究では抑制機能と問題行動の関連が認められた研究(Raailmarkers, et al., 2008)や内面化行動にのみ関連が認められる研究(Rhoades, et al., 2009),抑制機能と問題行動との関連は認められない研究(岡村,2012)など,一貫した結果は得られていない。 一方,幼児の感情認知と攻撃行動の関連を見出した研究は,Denham, et al.(2002)の研究のみである。さらに,幼児の感情認知と抑制機能及び問題行動との関連を検討した研究はほとんどない。そのため,平成26年度は,基礎的な研究として,感情認知及び問題行動と抑制機能の各下位尺度の関連を詳細に分析・検討することが目的であった。 本研究には,111名(年中児50名,年長児61 名)の幼児が参加した。対象児の内訳は,年中児50名(男児29名,女児21名;平均年齢4;5,範囲4;0-5;0),年長児61名(男児30名,女児31名;平均年齢5;6,範囲5;1-6;0)であった。幼児には,個別に,感情理解課題,PVT-R絵画語い発達検査,昼夜ストループ課題を実施した。また,担任保育士には,幼児用問題行動保育者評定尺度への回答を依頼した。 感情理解及び問題行動と抑制機能の相関関係を検討した結果,感情理解と問題行動の下位尺度である不注意と引っ込み思案との間に負の弱い相関(それぞれr=-.19, r=-.22)が見られ,感情理解と抑制機能に正の弱い相関(r=.28)が見られた。一方,抑制機能と問題行動の下位尺度である攻撃性,不注意,引っ込み思案にはいずれも関連が認められなかった。 この結果は,抑制機能と問題機能との関連が認められないとする岡村(2012)の研究と一致するものであった。今後は,縦断的な調査を実施し,さらに検討する必要がある。
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